アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎の関係
アレルギー性鼻炎から副鼻腔炎が生じる
花粉症のシーズンになると、アレルギー性鼻炎に悩む人が増えます。実は花粉のシーズンは副鼻腔炎も多く発症するのです。
以前までの副鼻腔炎は、上気道感染型・化膿型が圧倒的に多くを占めており、アレルギーをともなうタイプは全体の10%程度でした。
現在の副鼻腔炎は、アレルギーをともなうタイプは全体の40%を越える程で、アレルギー性鼻炎は副鼻腔炎を誘発させる因子とされています。
参照:厚生労働省:傷病別年次推移表
以前の慢性副鼻腔炎いわゆる蓄膿症は「都会に少なく農村に多い病気」でした。抗生剤や医療技術が発達したことで、近年になるにつれ有病率はどんどん低下しています。
有病率が低下し、重症度の病態も少なくなりましたが、軽症、中等症のタイプが増加しています。その増加原因が爆発的に増えたアレルギー性鼻炎であり、それにともないアレルギー型副鼻腔炎が急増しています。
小児のアレルギーと副鼻腔炎の関連性
花粉症や通年性アレルギーによる鼻炎の小児の2人に1人はレントゲン検査で副鼻腔の異常が確認されます。
反対に副鼻腔炎と診断された小児の25%~75%が、アレルギー性鼻炎を確認できることから、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎が密接に関係していることがわかります。
「季節性」アレルギー
スギ花粉・ヒノキ花粉
花粉の季節は鼻炎に困る人が増えます。実はその鼻炎によって副鼻腔炎が生じる方も増えるのです。
アレルゲン(花粉)→アレルギー性鼻炎→副鼻腔炎
花粉アレルギー合併の副鼻腔炎の予防と治療は、抗原となる花粉をできるだけ吸い込まない事です。
花粉シーズンを乗り切る3ポイント
花粉が飛び始める前の受診が理想です。アレルギー対策のお薬は、飛散時期の7~10日までに飲み始めないと、十分な効果が得られません。
早目の受診を進めるのは薬だけの話ではありません。花粉の時期の耳鼻科とアレルギー科の混雑は凄まじく、待ち時間もかかります。風邪やインフルエンザも多い時期なので、長居はよくありません。スギ、ヒノキ花粉に備えるためには、遅くても2月頭までには受診しましょう。
花粉の季節に入ると、マスクが品薄になります。2,3ヶ月の長期戦になるので、これらも早めに準備しておきましょう。
どうしても人前でマスク無しで話さなければならない方は、鼻の粘膜に直接作用するステロイド点鼻薬がいいでしょう。鼻粘膜のみに作用するので副作用の心配ありませんが、使い過ぎると効果がなくなり鼻炎も酷くなる恐れもあるので、大事な時だけに使用しましょう。
マスクやメガネをしっかりしている人でも、服装を忘れがちです。ウールコートやストールは寒さから身を守りますが、花粉が付きやすく落ちにくいのです。
飛散時期はダウンなどの表面がツルツルしているものを着こみ、首元のストールやマフラーは家庭でこまめに選択できるポリエステル素材がベスト。また、静電気防止スプレーを使うと花粉が付きにくくなります。
「通年性」アレルギー
ハウスダストというよりダニの死骸
通年性アレルギーといえばハウスダストです。内訳は、ダニの死骸やフン、人やペットの毛髪・ふけ・垢、植物の花粉、たばこの煙粒子、自動車の排気ガスなど様々です。
ハウスダストは通年性と言われますが、実は秋に一番症状が出ます。
原因はダニの死骸です。
ダニの繁殖期はムシムシした夏場であり、その寿命は約100日(3ヶ月)です。10月から11月にダニが一斉に寿命を迎えることで、ハウスダストにはダニの死骸が多く含まれます。
室内ダニ対策方法
掃除を掛ける場合は、吸入したダニを再びまき散らさないように、排気循環式の掃除機を使うようにしましょう。
カーペットやソファー、畳はダニが生息しやすい環境です。フローリングが好ましいのですが、できない場合は細かく掃除機をかけて清潔を保ちましょう。
次いで多い「犬」・「猫」の毛
ペットのアレルゲン対策は、極論を言えば飼育をやめるべきです。
それが無理であれば、犬は外で飼い、猫は寝室に入れないことです。飼育環境を清潔に保つために掃除も欠かせません。
アレルギー対策は副鼻腔炎対策
アレルギー症状による鼻炎から副鼻腔炎が生じることで、アレルギー対策は副鼻腔炎の対策にもなります。自分のアレルギーがなにか知り、対策することが重要です。
アレルギー検査は内科、耳鼻科、眼科、皮膚科で行われています。鼻症状の場合は耳鼻科、目の症状であれば眼科というように、症状が出ている部位を専門で見ている科を受診しましょう。
アレルギー性鼻炎から副鼻腔炎に至るメカニズム
アレルギー性炎症による鼻粘膜の膿腫や鼻汁増多が生じることによる自然口(鼻腔と副鼻腔をつなぐ換気管)の閉鎖が挙げられます。自然口が塞がると副鼻腔は閉鎖腔となり、粘液などが貯留することで細菌感染をもたらします。
自然口閉鎖によって副鼻腔内が低酸素状態になり、粘膜上皮の綿毛による輸送機能が障害されることで、微生物を含めた異物の排除が正常に行われなくなります。
すると粘液綿毛による異物の除去機能が低下し、接着分子の発現の亢進による炎症細胞集積や、気道上皮のバリア機能障害をもたらします。
アレルギー反応によって発現が増強するICAM-1(細胞接着分子)はウイルスの受容体であり、ウイルス感染から細菌感染を引き起こす契機となると考えられています。
細菌やウイルスによる炎症が進行する際、アレルギー性炎症によって亢進した接着分子の作用で、好酸球をはじめとする炎症細胞が集積し、さらに炎症作用を増大させます。
アレルギー疾患と衛生仮説
1989年に英国の疫学者のStrachanらは、1958年に出産した17.414名を20年以上かけて追跡調査を行い、アレルギー疾患保有率と同胞者数を検討した。その結果、同胞者数が多いほど花粉症の有病率が低くなり、さらに年少同胞者数ではなく年長同胞者数に依存していることを報告。
この論文では、非衛生的環境で年長同胞から感染にさらされる機会を多く持つことで、アレルギー性疾患の発症が抑えられるのではないかという衛生仮説が提唱されました。
同様にBraun-Fahrlander Cらは家畜農家で育った子供は、同一地区の家畜農家以外で育った子どもと比較して、吸入抗原特異的IgE抗体生産や花粉シーズンの鼻炎症状が有意に低下したと報告しています。
これらの報告からすると、感染はアレルギー発症に負の影響力をもっているようです。しかし、衛生仮説には否定的なデータもあり、現在も衛生仮説は仮説の域を脱していないそうです。