慢性副鼻腔炎に「マイクロバイオータ」関与
鼻の中でも細菌構成の個人差が大きいと判明
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)には副鼻腔のマイクロバイオータが関与している可能性があり、細菌の構成には大きな個人差があるそうです。
微生物学分野の専門誌フロンティアズ・イン・マイクロバイオロジーの2015年3月号に、オークランド大学(ニュージーランド)の研究グループの研究結果が掲載されました。
人の腸内には1,000種類以上、または100兆個以上の微生物が存在します。腸内以外に皮膚や口の中などの様々なところに微生物が存在し、私たちと共存しています。
微生物もそれぞれにDNAを持ち、その数は、消化器官の中だけでも300万個以上と言われます。それらの微生物を総称してマイクロバイオータと呼び、マイクロバイオータのDNAを総称をマイクロバイオームと呼びます。
バイオフィルムに注目
慢性副鼻腔炎は日本を含め、西洋社会の成人のおよそ5%の人がかかり、生活の質を著しく低下させます。
この副鼻腔炎症状の原因として、細菌が果たす役割はまだ解明されていませんが、近年、カビや細菌のバイオフィルムの役割が注目されているそうです。
菌膜の事。菌自身が産生する粘液に囲まれたさまざまな菌の集合体です。台所のシンクを掃除しないで放っておくとヌルヌルとしたものや、 歯の表面にへばりついてネバネバヌルヌルしたプラークはまさに典型的なバイオフィルムです。
研究は慢性副鼻腔炎の9人と健常者の6人を対象に、副鼻腔内のマイクロバイオータの構成と量を比較。また、副鼻腔内の3カ所でサンプルを取り、部位による違いも調べました。
結果、慢性副鼻腔炎の人ではマイクロバイオータの多様性が健常者より低く、細菌の量は症状と関連しなかったそうです。細菌の構成はサンプルしたの部位や症状の状態よりも、個人差があることが示されたそうです。
大多数のサンプル(健常者も含めて)では、常在菌のブドウ球菌属とコリネバクテリウム属が多く、特に個人差が大きかった慢性副鼻腔炎のグループでは、微生物叢の構成のアンバランスがこの症状をもたらしているのではないかと推測されます。
病気と微生物の関係性は腸内フローラ、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)として腸の分野で注目されてるそうです。最終的に、副鼻腔の細菌叢内変動の原因を理解することは、よりパーソナライズされた慢性副鼻腔炎治療の選択肢につながる可能性が見えるのではないでしょうか。