副鼻腔真菌症(ふくびくうしんきんしょう)

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副鼻腔真菌症(真菌性副鼻腔炎)とは?

 
真菌が原因の副鼻腔炎

副鼻腔真菌症

副鼻腔内に真菌(カビ)が増殖し、真菌塊という「塊」が形成され強い炎症を起こします。

 

真菌による副鼻腔の感染症を真菌性副鼻腔炎、または副鼻腔真菌症といいます。真菌の組織への浸潤の有無や組織学的特徴により、浸潤性と非浸潤性に分類されます。

 

欧米では、真菌に対するアレルギー反応により生じる難治性副鼻腔炎が報告されており、これをアレルギー性真菌性副鼻腔炎(allergic fungal sinusitis:AFS)と呼ばれています。

 

副鼻腔真菌症 症状と特徴

 

副鼻腔真菌症の症状

  • 鼻漏・鼻閉
  • 鼻出血
  • 痛み
  • 高熱
  • 激しい頭痛
  • 視力障害
  • 眼球突出

 

副鼻腔真菌症の特徴

左右どちらかの鼻だけに症状がでます。鼻汁は膿性または粘性で、悪臭を伴います。時には乾酪性(かんらくせい)のチーズのようなものが出てくる場合があります。

 

副鼻腔真菌症の症状の範囲は基本、副鼻腔内にとどまりますが、症状がひどくなると目や脳にまで達することもあります。その場合高熱、激しい頭痛、視力障害、眼球突出などを起こす場合があります。また、骨破壊性といって骨を破壊してしまう性質になることがあります。

 

副鼻腔真菌症 原因

 
アスペルギムス・ムコール・カンジタなどのカビが原因

副鼻腔真菌症

カビは人の体に存在しており、通常は炎症をおこすことはありません。しかし、普段から抗菌薬、免疫抑制薬、副腎皮質薬(ステロイド)を使用している方や、糖尿病や悪性腫瘍などの基礎疾患がある方の場合は副鼻腔真菌症にかかりやすくなります。

 

特に、免疫が弱まった高齢の方も注意が必要です。

 

注意

「糖尿病・悪性腫瘍」の疾患歴がある方で、むし歯がないのにもかかわらず左右どちらかの鼻からだけ、悪臭を伴った鼻汁が出てきた場合、要注意です。できるだけ早めに耳鼻科・耳鼻咽喉科で受診しましょう。

 

副鼻腔真菌症 種類

 
慢性非浸潤性真菌症

真菌性副鼻腔炎の中で最も多く、Mycetomaと呼ばれ、真菌塊(fungus ball)を形成します。ほとんどが片側に発症し、上顎洞が最も多いです。患者の免疫状態が低下すると浸潤性病変に移行する恐れがあります。

 

自覚症状として膿性または粘性の鼻汁が多いですが、頬部痛、頬部腫脹、鼻出血などを訴えることも多く、しばしば悪性腫瘍(上顎癌)や歯性上顎洞炎との鑑別が必要となります。

 

診断にはCTが大変有用で、副鼻腔内で高吸収域と低吸収域が混在するモザイク象が特徴的で、上顎洞後壁の骨硬化象がしばしば認められます。

 

治療は内視鏡下鼻内手術(endoscopic sinus surgery:ESS)、もしくはCaldwell-Lucの根本術により副鼻腔内の真菌塊を完全に摘出します。術後は副鼻腔洗浄を定期的に行い、ほとんどの症例で術後2~3ヶ月で副鼻腔粘膜は健常になります。

 

 

急性浸潤性真菌症

鼻眼脳型ムコール症や電撃型アスペルギルス症などで、ひとたび発症すると真菌が副鼻腔から眼、海面静脈洞、頭蓋内へ浸潤し、致死的になる場合があります。

 

免疫不全の患者や糖尿病や透析中でアシドーシスの状態で発症しやすいことが知られています。初発症状は頭痛や発熱で、進行に伴って眼痛、眼瞼腫脹、眼筋麻痺、視力低下などが出現し、最終位的には内頚動脈内で菌体の塞栓が生じます。急速に進行する疾患のため早期診断が非常に重要となります。

 

治療は患者の栄養状態、基礎疾患を考慮した上で、抗真菌薬の全身投与を行い、副鼻腔局所の感染病巣の除去を可及的に速やかに行わなければなりません。手術ではESS、外切開手術のいずれの術式でも完全摘出は困難なので、可及的に減量手術を行うのが一般的とされています。

 

急性浸潤性真菌症の原因の多くは予後不良であり、死亡率を低下させるには早期の診断と治療が必要です。

 

 

アレルギー性真菌性副鼻腔炎

10~30代の年齢層に多く、片側に発症します。多発性の鼻ポリープ、副鼻腔内に貯留するニカワ状で極めて粘調なムチン、ポリープや副鼻腔粘膜、またムチン中の著明な好酸球浸潤を認められます。しばしば再発し難治性であり、喘息合併が多いです。

 

治療はESSとステロイドの全身投与が有効とされています。しかし、病変が再燃することが多く、適宣ステロイド投与が必要となります。

 

アレルギー性真菌性副鼻腔炎は真菌が抗原なので、術後は副鼻腔内の頻回の洗浄療法や抗真菌薬などのネブライザー療法で、可及的に抗原を除去する必要があり、自宅や職場など生活環境からなるべく真菌を減少できるようにしなければなりません。

 

臨床経過

患者の免疫状態

真菌の役割

組織浸潤

① 急性 免疫不全が多い 病原菌 あり
② 亜急性・慢性 免疫正常 病原菌 あり
③ 慢性 免疫正常 真菌塊 なし
④ 慢性 免疫正常 抗原 なし
  • ① 急性浸潤性
  • ② 慢性浸潤性
  • ③ 慢性非浸潤性
  • ④ アレルギー性(AFS)
 

副鼻腔真菌症 治療方法

 

治療には抗生剤を使用しない場合もあります。上顎洞に副鼻腔真菌症が起こった場合は上顎洞内を洗浄するのが効果的ですが、改善されなければ手術となります。内視鏡下鼻内副鼻腔手術で真菌塊を取り除いて、病的粘膜の掃除を行います。

 

これらの治療で改善するのがほとんどですが、ごく稀に骨まで炎症が進むこと(骨破壊性)があり、この状況になると抗真菌剤の全身投与に加え、鼻の切開を行い病変部位を取り除く必要があります。

 

症状を自覚したら我慢せず、耳鼻科で診察を受けることが重要です。

 
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